「まだ冷戦状態なの?」

カシャカシャ、ボールに入った材料を混ぜながら、小春(こはる)はさやかに問う。

「なんでこんな事になっちゃったんだろう…」

さやかはうつむく。

日和(ひより)も、澄翠(きよあき)も、急にさやかを避け始め、会話にならないまま、夏休みが始まってしまった。

今日は、さやかの誕生日だから、小春がさやかにケーキを焼いてくれると言うので、さやかは小春の家にいる。

日和は、朝早くに出掛けたので、気を遣う必要はない。

「さやかさぁ、キヨに好きって言ってた?」

「ええ!?
好きだから付き合ってるんでしょう?」

「あ~、じゃああれだ、好きって言わなかったわけだ」

「うん」

「男は女が思っているよりも子どもなの。
不安にさせないよう、ちゃんと好きって言ってあげなきゃ」

さやかは納得いかない顔をした。