「ではお義父さん、お先に失礼します」

さやかが、義父・鈴木 一輝(すずき いっき)に、頭を下げると、

「あ、さやちゃん、待って」

さやかを呼び止めた。

「結婚式の件だけど、別れたとは言え、澄翠(きよあき)の母親だし、元妻に連絡をしたら、出席すると言っていた。
あと、由文(よしふみ)も出席すると、澄翠に伝えておいてくれないか?」

由文と聞き、さやかは眉をひそめたが、すぐに笑顔に戻った。

「はい、わかりました」

「じゃあわたしは帰るよ」

一輝がドアノブを捻る。

「あの…っ、元はお義父さんの家なのに、どうしてわたしたちがここに住ませてもらい、お義父さんが出て行かなきゃならないんですか?」

「若いうちから同居すると、ろくな事にならないからね」

一輝は苦笑いを浮かべると、アパートに帰って行った。