手のひら王子様

「あー! もうわかったって! 話は後で聞くし、遊ぶのも後や!」


二人に纏わり付かれた椋太朗は鬱陶しそうな照れ臭そうな微妙な顔で抵抗してる。


ここで強く振り切れないのが椋太朗の良いとこなんだろうけど……。


にしても、二人の椋太朗への懐きっぷりは予想以上。


わざわざ下手な芝居を打って一人暮らしをしてるくらいだから、もっとよそよそしいのかと思ってたのに。


椋太朗とお母さんと弟さんの仲睦まじい様子に気を取られてたわたしを、


「さっ。椋のアホはほっといて入って」


「はぁ……」


にっこりと微笑んだ椋太朗のお父さんは、いつの間にかわたしの左手を取って玄関の中へと誘おうとしていた。


ここまで来てたら流れに身を任せるしかないか。


椋太朗のお父さんも思ってたよりずっと常識人だし……。


「椋のアホさ加減に疲れたら遠慮なくどついてええからね」


「は、はは……」


爽やかな笑顔でサラリとわたしにこんなことを囁いてしまうけど……。


常識人……だよね?