「……桜菜。ごめん俺」



しょんぼりとうなだれた椋太朗が小さな声を絞り出してる。




その椋太朗の胸にわたしは黙って飛び込んだ。




ホントはもうちょっと困らせようかと思ったけどそれ以上に、本物の椋太朗に触れてその体温を感じたかった。



突然何も言わずに抱き付いたら、椋太朗は面食らったようにわたしを見下ろしてる。



「……腕一杯に抱き締めてくれるって言ったでしょ?」




わたしの声を聞くなり椋太朗は嬉しそうに笑って、腕一杯にわたしを抱き締めてくれる……。



いつもわたしを見上げていた椋太朗を、今はわたしの方が見上げる。




脈打つ体も体温も触れる肌の感触も……全てが愛しいって感じる。




「椋太朗」



そそっかしいアンタが聞き忘れてった言葉。



「わたしもアンタが好きっ」




言いそびれた答え。



それを聞いた椋太朗がほのかに赤くなった顔を、わたしに寄せた。



くっついたおでこと、わたしの頬を包む大きな手のひらの感触。