手のひら王子様

わたしの一方的な決意表明に椿雪さんは何度か頷いて……、



「お気持ちはわかりました……。少し、椋様のお話をさせてください」



静かに答える椿雪さんの言葉は、どことなく不安げな色を持っていた……。



相変わらずの淡々とした口調で、椿雪さんは語り始める。




「椋様がまだ五歳だった頃。前の奥様の連れ子として支倉家に現れました」



椋太朗とお父さんは血が繋がっていない。



いきなりの真実に目を丸くするわたしにかまわず、




「旦那様と奥様の間にお子様が出来なかったこともあって、旦那様は椋様を大変可愛がられていました」



椿雪さんの話は止まることなく、同じ調子で続けられていく。




こうして椋太朗は、両親からの沢山の愛情の中で育っていったらしい。




……なんか納得。




沢山愛されてぬくぬくと育ってきたから、椋太朗は真っ直ぐで明るいんだ……。




ちょっとバカ……だけど。




なんて思っていたわたしの考えは、あっさり打ち消されてしまう。