椋太朗が動かなくなって一日が経った。



一晩中泣き明かしたわたしが、



動かなくなった椋太朗をカバンに入れてやって来た場所。



ここいらで有名な豪邸。



支倉邸だった。




動かなくなった椋太朗を見つめながら色んなことを考えた。



本当は椋太朗なんて人間は存在しないのではないか……。



例えそうだったとしても、自分の目で確かめるまでは気が済まない……。



そう思って支倉邸の門まで来たのは良いものの、



「…………」



あまりにも自分とは縁の無い場所に、後込みしてしまう庶民なわたし……。



身分証明の為に制服を着てきたけど。



だからって何の面識も無いわたしが中に入れて貰えるだろうか……。



門の前で言ったり来たりすること十分。


「……何かご用ですか?」



背後からかけられた声に、わたしは思わず勢い良くそちらを振り向いた。



わたしを見下ろす長身でスーツの男の人。



確かこの人は……、



「……椿雪さん?」



椋太朗と一緒に居たときに会った椿雪さんだ。