「……ちゃうよ。桜菜はそんな風に思ってへんよ」



椋太朗の声は、いつになく真面目だった。



何の根拠も無いくせに……自信に溢れた声で百合菜に言い切った。



「確かにガマンが癖になってるとこもあるけど、だからって姉さんを恨んだりしてへんよ」


「妖精さん……」



「強いけど……弱いとこも一杯ある普通の女の子や」




椋太朗の優しい声が、



わたしと百合菜を安心させた。




それから百合菜はしばらく泣いて……、



気がついたら小さな寝息を立てていた。



今度こそ氷枕を変えようと立ち上がったわたしに、



「ホンマ……ガマンの上手な娘やなぁ」



百合菜の枕元に座っていた椋太朗と目が合った。



「……目、赤いで? ホンマは起きてたんやろ?」



ニッと笑った椋太朗は、全てを見透かしたような視線でわたしを見つめている。



「……知らない」




それが恥ずかしくて、足早に氷枕を持って立ち去ろうとする背中に、



「そういう素直じゃないとこも可愛いけどなっ」



嬉しそうな椋太朗の声が聞こえた。