「俺は……人形の体になる前から……」



わたしの瞳をとらえた椋太朗が、言葉を続けようとした時。



『ピンポーン』




あまりにもタイミングの悪すぎるチャイムに、軽く憤りを覚えた……。



まったく……。



なんだってこんなときに……。



イライラ丸出しでズカズカと玄関に向かったわたしが、



「っ!?」



ドアの覗き穴から見た者……。




わたしは慌ててリビングに引き返した。



「椋太朗! しばらくわたしの部屋に居て!」



食卓の上にちょこんと座っていた椋太朗を片手に持ち上げ、



わたしは寝室のドアを開けた。



「なんやなんや~。今日の桜菜はえらい積極的やなぁ~」



わたしの手の中から、やたら嬉しそうに笑いかけてくる椋太朗。



「違うっ! そうじゃなくて……」



「あらっ?」



部屋の入り口でゴチャゴチャと言い合っていたわたしたちの背後には、



「妖精さん?」



にこやかに微笑む百合菜が立っていた……。