涙がこぼれ落ちる前に(短編)

「ありがと。」

というと、怜央くんは、ん。と言ってホームのベンチに座る。

わたしもその隣に座った。

「今日、急に誘っちゃったのにありがとう!めっちゃ楽しかった!」

怜央くんは少し口角を上げて、

「べつに。俺もまあ楽しかったし。」

と言ってくれた。

冬の静けさの中、ふたりの間に嫌じゃない沈黙が続く。