校内に飾られた笹の葉に、五色の短冊が混ざりあって吊るされていく。
楽しげに書く彼らは、別に叶うかなんて問題じゃない。
その瞬間を友達と共有するため。
青春を味わうため。
あわよくば彼氏彼女ゲット、なんて。
みんな織姫と彦星のことなんてほったらかして、自分のことばかり。
そんなんだから、毎年のように雨が降るんだ。
…とか毒づいてみる。
そんな人たちを横目に、あたしはただ渡り廊下の端で携帯を握りしめた。
いつ震えるかも分からないスマホの受信を待ちながら、ぼんやり考える。
そもそも、織姫と彦星が一年に一回、必ず会っているなんて保証、どこにあるんだろう。
根拠はあるのか?
もしそうだとしたら、何千年も会い続けていることになる。
そんなこと、ありえるのかな。
たとえば、片方が飽きたり、目移りしたり、とか。
…伝説に思考を巡らせても意味ないか。
ただ、あたしが感傷的になってるだけ。
一年に一度でも大切な人と幸せを共有できる時間を持てる彼らが、あたしは羨ましいんだ。
だからこれは、あたしの八つ当たりだ。