心臓が、ずくりと不気味な音をたてた。そんな気がする。

暑さだ。暑さだ暑さだ暑さだ。
暑すぎて頭がおかしいんだ。

僕は、全てを夏の暑さのせいにして、ベッドに横たわる。

「あれれ、寝ちゃうの??」

僕の顔の真上から覗き込むナツ。
こんなやつがいたら、僕は寝ることすら叶わないだろう。

「寝ないよ、疲れただけ」
僕が答えると、ナツはふわりと顔の上から退いた。

いつになったらナツは帰るのか。
出来れば、早くいなくなってほしい。
願わくば、僕の幻想であってほしい。

そのまま目を閉じて、現実に落胆した。

理由は、ナツがまだ僕の部屋にいたからだ。

親に何を言われるでもない。
僕はそのまま重くなっている瞼を下げようとする。

遠退く意識のなかで、彼女の声が聞こえた。

「嘘つき」