sweet voice

「はい、カルディナルビバレッジでございます」


「いつもお世話になっております、白戸商事の藤原と申します。


荒井課長いらっしゃいますでしょうか」


「かしこまりました、少々お待ちください」


保留メロディが流れる間、私は後輩から預かった名刺をながめていた。


カルディナルビバレッジって、ほんと言いにくい名前。


大手だから、そんなこと思ってても何も言えないけどさ。


荒井拓海(あらいたくみ)かぁ、課長ってことはオッサンなんだろうな。


「お電話代わりました、荒井でございます」


オッサンだと思いこんでいた私は、その若いけれどシブイ声に、一瞬でやられてしまった。


「もしもし?」


ヤバイ、無言の怪しいヤツになってしまった。


「いつもお世話になっております、白戸商事の藤原と申します。


お忙しいところ恐れ入りますが、先ほど送信しました発注書の数量変更をお願いしたいのですが・・・」