sweet voice

「よかった、断られるかと思った」


「断ったりしないよ」


「今日は、フラれる覚悟できてたつもりだったけど、やっぱり現実になるとショックだったからさ。


やっぱり僕がいいと思ったら、すぐ連絡してよ」


「わかった」


伸二くんは深呼吸をひとつすると、


「じゃあ、帰るね」


コートを手に取り、玄関へ向かった。


「気をつけてね」


「ごちそうさま、おいしかった」


「ケーキありがとう」


「どういたしまして」


玄関を出て扉が閉まったら、友達になるってわかっている。


名残を惜しむつきあったばかりのカップルみたいに、なんでもない言葉を積み重ねてゆく。


積み重ねる言葉がなくなる瞬間を、ふたりのうちどちらかが生み出さないといけない。


そのどちらかになりたくなくて、


「ニューヨークへ行く日が決まったら、連絡してね」


「まだしばらく時間あるから、それまで何度も連絡しちゃうかもしれないけど」


「元気?とか、なんでもない連絡でもいいよ」


やがて来てしまう沈黙が怖くて、会話が続いていく。