「なによ秋夜」


周囲と会話する声よりもワントーン低い声でミホコが聞いてくる。


「なにって、う~ん」


俺は言葉を濁しながらミホコのノートに視線をやった。


ノートはすでにみんなに囲まれていて好き放題うつされている。


「また課題してこなかったの?」


「この前はちゃんとやったし」


「ちゃんとって言っても、やったのは一問だけじゃん」


ミホコの顔が自分の母親のように見えてくる。


吊り上がった眉とか、組まれた腕とか、俺の母親そっくりだ。


「それでも俺にしては頑張ったんだよ。なぁ、いいだろ? みんなだって写してるんだしさぁ」


「ダメ。みんなは毎日じゃないもん。でも秋夜は毎日じゃん」


そう言われると痛い。


確かに、毎日ミホコのノートを写しているのは俺だけだ。