「本当のことだ」


伸紀が静かな声でそう言った。


「俺のひぃ爺ちゃんは刀鍛冶で人間国宝に選ばれてる。俺も家を継ぐつもりなんだ」


「な……んで……」


なんで言わないんだよ。


なんでそんな大切な事を隠してたんだよ。


そう言いたかったけれど、何も言葉にはならなかった。


ただ自分が無力で、何者でもなくて、情けなくて、悔しかった。


伸紀は真っ直ぐに男を見た。


「それなら俺がミホコの代わりになる」


迷いなく、そう言ったのだった。