「おい、秋夜!」


伸紀が俺の肩をつかむ。


けれど自分の意思を変えるつもりはなかった。


「お前たちのことは気絶している間に調べさせてもらった。残念だが立木秋夜には大した値段はつかないようだ。でも……」


男の視線が伸紀へ移る。


それだけですべての意味を理解した。


まさか、うそだろ……?


「村澤伸紀。お前の一生はあの小娘よりも高く売れる」


ミホコよりも……!


「村澤伸紀、お前の祖先は人間国宝に選ばれたんだってな。その才能をお前もちゃんと受け継いでいる」


伸紀は何も言わなかった。


「嘘だろ……?」


そんな話、俺は今まで一度も聞いたことがなかった。