ナイフを取り出すとその切っ先が鋭く光った。


まだ1度も使っていないナイフの切れ味は間違いないだろう。


俺はそれを両手で強く握りしめた。


人へ向けてナイフを突き出した事なんて今まで一度もない。


両手は小刻みに震えていて、とても人を攻撃できるような状態じゃなかった。


それでも、男たちは俺の手の中のナイフを見て足を止めた。


できればそれ以上近づいて来て欲しくない。


本当に人を刺すようなことなんが俺にできるとも思えなかった。


「俺はミホコを助けたいんだ」


男たちへ向けてそう言った。


「ミホコはこんな場所に売られるような人間じゃない。騙されてここに来たんだ!」


新人に裏切られ、両親に裏切られてここにいるんだ。


「残念だが、その子の買い手はもう決まっている」


1人の男が一歩前へ出てそう言った。