そう思った時だった。


途端に外が騒がしくなって俺と伸紀は目を見交わせた。


個室をそっと出て、トイレのドアから少しだけ外を確認する。


今まで誰もいなかった廊下に次々と人が出て来るのが見えた。


どうやらこの階には男性ばかりがいるようで、その誰もが一定方向に歩いて行く。


けれど、人々は自由に会話をし時々冗談なんかを言いあいながら歩いている。


洗脳されていると思っていた俺はその光景に驚いた。


みんなもっとロボットのような状態になっていると思い込んでいたのだ。


「なんだよ、意外と普通な感じじゃないか」


そう言うと、伸紀も頷いた。


最後の1人がトイレの前を通り過ぎたのを確認すると、俺を伸紀は音を立てないようにトイレから出た。


みんな食堂へ向かっているらしい。


これから昼飯の時間みたいだ。


「どうする? 誰かに声をかけてミホコの場所を聞きだすか?」


伸紀にそう聞かれて俺はとまどった。


確かに、今の彼らを見た限りじゃ危険そうには思えなかった。


彼らに紛れてミホコの場所を聞き出すこともできるかもしれない。