俺がこの身を差し出したところで、たかが2億円。


どれだけ頑張ってみたところで、その数字が極端に跳ね上がる事もないのだろう。


「……俺が瑠菜を助ける事なんてできないのか?」


そう言うと、西崎さんはすこし驚いたように俺を見た。


「なんだ、娘の名前を知ってるのか。それなりに仲が良かったのか?」


そう聞かれたので、俺は中途半端に頷いて見せた。


「ただの片想いです」


そう言うと、西崎さんは納得できたように大きく頷いた。


「なるほど、そう言うことか」


そう言い、すべての話が終ったと言う様子で席を立った。


俺もそれを追いかけたり、引き止めたりする気力はもう残っていなかった。


瑠菜のこれからの人生を知っていながら、なにもすることはできないのだ。


それは真っ暗な穴の中に真っ逆さまに突き落とされたような、絶望感だった。