僕はバイトからの帰り道、1人の少女と会う。

彼女はいつも花を摘んでは、顔色一つ変えずに泣いている。

無表情な顔に一筋の涙を流している。





今日も、同じ時間。彼女は花を摘んでいた。いつもと違うのは、声をかけた僕。

「何してるの」

普段は伏し目がちな彼女の目が丸く驚いた様子。

僕より二つか三つ年下のように見える。大学生だろうか。


「ごめんね、怪しい人じゃないんだ。ただ、いつも見かけてて、いや、ほんとに怪しい人じゃあないんだけどね。どう言ったら良いのかな」


「ふふっ」


どう言っても、怪しいようにしか聞こえない僕の言葉に彼女は、辿々しいピエロを見ているかのように笑う。

初めて笑った顔を見た。


「花を摘んでるんです。可哀想かもしれないけど」


彼女は摘んだ花の一つを太陽にすかして小さく呟く。


「綺麗だね。花に詳しいの?」


「そうですね。好きなんですよ、花言葉とか。」


春のそよ風にぴったりな時間の進み方をしている。

ゆっくり、ゆっくり話している。

それがこんなにも心地いいのか。

もっと早くに彼女に話しかけていたらよかった。




彼女に別れを告げ、家路に戻る。

ふと、僕は彼女がいつも泣いていたことを忘れていたことに気づいた。

まだまだこれからだ。仲良くなってから聞けばいい、そう思った。