――一週間後、ランチタイム終わりがけの時間帯に小林さんが再来店した。

 今回は、溝口さんに似た優しそうなおじさんと一緒だ。前回と同様、テーブル席に座っている。


「すみません、水出しアイスコーヒーを二つください」


「かしこまりました」


 小林さんは、笑顔ではきはきと注文していた。前回とはまるで別人のようだ。


「ここのコーヒーはとてもおいしいんですよ」


「そうなのですか。僕はこの辺に住んでいるんですけどね、こんなところに喫茶店があるなんて知りませんでしたよ」


 水出しアイスコーヒーを席まで持っていくと、二人の世間話が聞こえてきた。
 二人ともとてもリラックスした様子で、会話を楽しんでいるようにみえる。


「今日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。今回ご紹介させていただくのは、保険料が上がらないタイプのものです」


 テーブルの上に資料を広げると、小林さんは、できるだけ難しい言葉を使わずに説明していた。
 堂々と話す彼は、誰がどう見ても“営業”だった。


 さゆりさんは穏やかに笑って、カウンターから二人を見守っている。