「何から何まで、本当にありがとうございます。店長さんに優しくしてもらったことも、肉じゃがの味も一生忘れません。必ずまた来ますね」
帰り支度をする小林さんに、かけてあったジャケットを手渡した。
彼は俺にも「一緒にご飯を食べてくれてありがとう」と笑いかけてくれた。
その表情はとても晴れやかで、なんとなくだけど、この人はもう大丈夫だと思った。
「では、また必ず伺います」
小林さんはそう言い残して、店から去っていった。
「竹内さん、すごい人だったんすね! カッコよかったっす」
「アルバイトくん、ありがとう。でも大したことはしていないよ。私は迷える子羊に手を差し伸べただけさ」
竹内さんは謙遜しているけれど、得意げに髪をかき上げたりとまんざらではない様子だった。
「さゆりさんも、何か悩みごとがあればいつでもご相談くださいね」
「ええ、ありがとうございます。それより、竹内さんも会社に戻られたほうがよろしいかと。社員の皆さまがお待ちですよ」
「……たしかに、可愛い部下たちのためにも戻らないと。ごちそうさまでした」
さゆりさんは相変わらずの塩対応だった。
竹内さんは“かっこよかった”って一言がほしかったんだと思う。
竹内さんはカウンターにコーヒー代を置いて、とぼとぼと帰っていった。
ライバルだけど、やっぱりちょっとだけかわいそう。


