「そうだ、お客様のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。僕は小林孝(こばやしたかし)といいます」
「小林さんですね。私はこの店の店主、宮野さゆり(みやの)ともうします。アルバイトの彼は、宇垣冬馬(うがき)くんです」
「どうも、宇垣です」
小さく頭を下げると、小林さんはニコッと笑って同じようにしてくれた。
おっさんと一緒にお店に入ってきたときは、なよなよしていて頼りなさげに見えたけれど、今はそう感じない。
笑顔が爽やかで、優しそうで、老若男女に好かれそうなタイプだ。それなのにどうして、あんなに怒られていたのだろうか?
「小林さんは、どうしてあのおじさんに怒られていたんですか?」
単刀直入に聞いてみると、さゆりさんに「ストレートに聞いたらだめじゃない」としかられてしまった。
俺たちのやり取りを見て、なぜか小林さんは声を出して笑っている。


