さゆりさんは何か納得したようだったけど、俺はさっぱりわからない。
ただ、先走りすぎた感じはする。もしそうだとしたら、なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだだろ。
「たしかに一番の目的はそうでしたけど、このお店は母の形見のようなものなので、手放すわけないですよ。それに、以前小林さんがいらしたときにも話しましたけど、このお店で働くのって、とっても楽しいんです。素敵な人たちにたくさん出会えましたしね」
「でも、お父さんはいま違うところに住んでいるんですよね? 離れ離れのままでもいいんですか?」
「ああ、それなんですけどね。お父さん、今の会社を早期退職して、ここに引っ越してくれるみたいなんです。もう同じ過ちは繰り返さないって意気込んでいました」
全身の力が抜けていくのを感じて、近くのカウンター席に腰を下ろした。
なんだ、さゆりさんお店をやめるつもりないんだ。お父さんもこっちに来てくれるなら何の問題もない。
俺の居場所は、変わらずここにある。
そう思ったらほっとして、大きなため息が出た。
まったく、鈴木のおっさんが不安をあおるようなことをいうからだ。


