「さゆりさん、頭をあげてください。俺はなにもしてないですって」
「そんなことないです。冬馬くんがお父さんを追いかけてくれたから、再会することができたんです。本当にありがとう、感謝してもしきれません」
さゆりさんはとても満足げに、幸せそうに笑っている。
またもや、いつもと違う光景を見た。
初めてさゆりさんと出会ってから今日まで、さゆりさんの笑顔は何度も見てきた。
けれども、今日の笑顔は、今までのものとは比べられないくらいにきれいで、嬉しそうで、きらきら光っていた。
ああ、そうか。
ようやく、念願が叶ったから、こんなに嬉しそうにしているんだ。
彼女を心から笑わせているのはあのお父さんなんだ、と悟った。
……さゆりさんが一番幸せなのは、お父さんと一緒に暮らすこと。それをずっと願ってきた。
さゆりさんと離ればなれになったら寂しいけれど、好きな人の歩くべき道を応援するのが男というものだろう。
さゆりさんのことが大好きだから、彼女の幸せを願う。
短い間だったけど一緒に過ごすことができたし、いろんなことを教えてもらった。彼女のおかげで、たくさんの人と知り合うこともできた。
それだけで、俺はもう十分だよ。
「……さゆりさん、俺、喫茶リリィでアルバイトをすることができて、本当によかったです。さゆりさんや、お客さんとかけがえのない時間を過ごすことができて、本当に幸せでした」


