それだけじゃない。
もう喫茶リリィで、さゆりさんやお客さんとみんなで談笑することができなくなる。
ジジィトリオと何でもない話で盛り上がることも、竹内さんとさゆりさんにかんする話をすることもできない。
小林さんと一緒にご飯を食べることも、実可子ちゃんたち子供と遊ぶこともできなくなる。
喫茶リリィがなくなるかもしれない、という危機感を得て初めて俺は……あそこが俺の居場所になっていたと自覚した。
「……おい、小僧どうした? 店の前でぼーっとするな」
ショックのあまり、おっさんのうるさい声も耳に入っていなかった。
「あ、ごめん、おっさん。俺帰るわ」
「おう、車には気をつけろよ」
俺は食べかけのコロッケを両手にもったまま店を離れ、家路についた。
交互にコロッケを食べるも、さっきみたいに美味しいと感じない。むしろ、おっさんには悪いけど、油くどいとさ
え感じてしまう。
コロッケ屋の次はたい焼き屋と和菓子屋にも行こうと思っていたのに、いけなかった。


