今日は人生で最悪の日だ。十五年かけて築き上げてきたものが、たった数秒の出来事で音をたてて崩れていったのだから。

 俺のせいだ。俺があのとき、あんなミスをしていなければ……。

 何度も自分を責めながら、みんなと歩いた商店街を独りぼっちで歩く。


 部活帰りにあの店で食べたコロッケは格別にうまかった。二軒隣のたい焼きも甘くておいしかったし、向かいのみたらし団子はもちもちした感触が最高だった。


 でも、今はとても立ち寄る気にはなれない。むしろ、みんなとの思い出の場所を目にするだけでつらい。


 早く商店街を通り過ぎたいけれど、このまままっすぐ家に帰る気にもなれない。

 親に「試合どうだった?」と聞かれて、「俺のせいで負けた」と口に出せるほど、この現実を受け止めきれていないからだ。


「今からどうしようかな……」


 と独り言を呟いたその時、どこからか漂う芳醇なコーヒーの香りに気がついた。コーヒーなんてほとんど飲んだことがないし、あの苦みは好きになれない。

 それなのに、なぜかとてつもなくこの香りが気になって、追いかけたくなった。