7月。台風一過。
拭っても拭っても汗が止まらない。

金持ちの心はこの空の色を打ち消すように、少しも晴れていなかった。

金持ちはゲイである。
隠す気持ちは全くなく、勿論金持ちの関係者には周知の事実である。

金持ちには今月で2年になる彼氏がいた。彼氏の名は「しめじ」、スマホに保存したしめじとの写真は50枚にのぼる。

正直しめじの事は嫌いではない。だが、プレイの後にすぐ写メを撮りたがる性格だけはこの2年で一度も受け入れられなかった。

「写真いらん」

金持ちは何度も言った。
その直後は写メをやめるが、1日経てばまた撮りたがる。金持ちはもう注意することすら面倒になっていた。

金持ちの住まいは都内の一等地、タワーマンションの一室にある。
全自動カーテン、間接照明、イタリア製の4人掛けテーブル。誰が来てもみんな驚いてくれた。あの2人以外は…。

ひとりはしめじ。
入るなり「これ、何万ですかぁ?」と値段ばかり聞いてきた。
「13万。」金持ちが答えると「11万かと思った」と、どうでもいい返事が返ってきた。正直第一印象は最悪だ。

嫌いではない。嫌いではないのだが何故好きになってしまったのかも分からずに2年を過ごしてしまった。

そんな中、金持ちはふと思い出す。あの部屋を驚かなかったもう1人の存在を。
もう1人の名は「タカティン」。

しめじと付き合う前の彼氏だ。

金持ちはタカティンの事が好きだった。心から愛していた。タカティンから発される言葉なら、それが痛烈な嫌味でもすべて愛することが出来た。

ただしタカティンは未成年、同じ男性である事も踏まえて世間から認められる恋ではなかった。