グレーの空に宵闇のイルミネーションが映っていた。その色はやはり都会らしく濁っている。
あの日に見たような晴天は、この町では見られないだろう。
それと同じように、あの日の俺たちもここにはいなかった。
その癖に、俺はあの日の胸の気だるさを、いまだに引きずっていた。
「あの、さ」
「うん?」
あの日の筆箱は――。
「……ふみ」
唇からこぼれかけた俺の懺悔は、昔聴いたような低い声にかき消された。
そしてその声に後ろを振り返ろうとする前に、星野の柔らかな声が飛んでいた。
「わたるくん」
わたるくん、と呼ばれたその男は俺の目を静かに見据えると何事もなかったかのように星野の手を引いた。
尾島弥。
それは、あの頃星野をいじめていた男だった。
ふたりはごく自然に笑い合って、ごく自然に指を絡めて、ごく自然に、俺に旧友としての挨拶をぶつけた。
俺はその声に何かを返して。
あの瞬間に俺の口から出かけていた言葉は永遠に出口を失くしていた。
夜のブランコに腰かけて、あの頃と同じように地面を蹴っても、あの頃のような浮遊感は一つもなかった。
幼い自分の淡い感情は、行き場もなく、相手を傷つけることで消化していた。
その罪を知った今、捨てることもできずに俺の机の中で燻っている古い筆箱は、持ち主もなく、じわりじわりと錆びついている。
あの日もし。
もしも俺が、今日の言葉を発していたら。
アイツの中の俺と尾島の立ち位置は変わっていたのだろうか。
ああ、そんなことを思うこと自体が、既に優しくなどないというのに。
「優しくなんて、ねえよ」
「 」



