「じゃあ、今日はここで解散にしましょー!」
終始過去に思いを馳せていた合コンが終わっていた。
目の前には、それぞれが狙っていた女を口説く同期の姿があり、俺の今日の調子がすこぶる悪かったことを知った。
「宮岡は星野さん送ってやれよー」
「おー……」
各々に散って行く同期の姿をぼんやりと見送りながら、たいした収穫もない合コンに息を吐きおろす。
それもこれも、星野なんかが現れたせいだろう。
当の本人は、俺に送られるなどといった顔でおろおろしている。
「……帰るか」
それでも俺は、その顔をそ知らぬふりして駅までの道を歩き出していた。
「宮岡君、変わらないよね」
夏が始まりそうな予感を孕んだ空気が鼻腔を撫でる。
その匂いはいつも俺の思考を一つだけ昔に押し戻した。
星野はゆったりと夜の街を歩いていた。
俺はその歩幅にあわせるようにただ歩いていて、星野の唇から流れ落ちる言葉を拾い上げた。
「それ、褒めてんのかよ」
「褒めてるよ~。……ほら、覚えてるかなぁ、昔、私が筆箱忘れちゃったとき」
覚えてる。というか、ちょうどさっき回想していた記憶だ。
まさか、こいつも憶えていたとは思わなかった。
そんなことに狼狽えた。



