しかしこの一見ーーいや百見しても完璧なように見える慧さんは、少し病んでいるのか、束縛がかなり激しい。


 一度(ヒトタビ)私が、高校の同窓会に行くと言おうものなら、何故か同級生から当日にキャンセルの連絡が入り、訳を聞けば『ごめんね。
同窓会、1ヶ月後に延期になったんだって』
私の都合が付かない日に延期になるし。


 その上なぜか、私が男性客の相手をしようものなら、同僚が隣から割り込んできて無理に交代させられる。

それに対し同僚は、『上からの命令じゃないのよ!』と言い訳をして見せるのだが、余りにも分かりやすいため、この人が元凶なんだろうな、というのは容易に想像できる。


 独占欲が強いことは別に嫌じゃない。

それだけ愛されている、という証になるから。


 そして私も恐らく、それらを甘んじて受け入れている、ということは彼に対して好意を持っているのだろう。


「今日は俺も休みを入れるよ。
どこか遊びに行こうか」


 だからこそ、この招待状のことは絶対に言えない。


「ごめんなさい、今日は先約があるので」

「先約ーー?」


 慧さんは眉を顰めて怪訝そうに私を見るので、私は目を逸らさず『はい、懐かしの友達と』と、コクリと頷いて告げる。


「そう、遅くなりそうなら連絡を入れて」

「わかりました」


 別に疚しいことがある訳じゃない。

私が高校時代、知人の家庭教師をやっていた頃の教え子と、少し会うだけだ。


 年の差は歴然としているため、恋愛などには結び付かないが……一応相手は男なので、伏せておくべきだと判断した。