「んーー」


 眩しい朝日が真白いカーテンの隙間から、私たちの元へと降り注いだ時、高く手を伸ばして背伸びをする。


「理恵……」


 するとどうやら、私の隣に半裸で眠る、ダヴィデも吃驚なほど美しい身体を持つ、美貌の婚約者が目を覚ました。


「おはようございます、慧さん。
こんな時間まで寝ていらしているなんて、珍しい」


 引き寄せられた腕に、私は抗う理由も無く自ら近寄り、陶器のように白くて上質な肌に触れる。


「理恵、仕事は?」


 『私より滑らかな手触り』と女でありながら、自分の方が心地悪いことに劣等感を抱いている時、彼は私の瞳を見つめて告げる。


「今日はシフトが入っていませんので」

「もしかして、わざと?
ーーそう簡単に、休みなんて貰えないだろうに」

「まさか、度重なる偶然があっての休みです」

「そう。
さすが僕の理恵は嘘をつくのが下手だ」

「褒め言葉と受け取っても?」

「勿論、素直な性格だと褒めているからね」


 慧さんーーもとい私の婚約者である長谷川グループの御曹司は、既にいくつものホテルの経営者。

そして私は、彼の経営するホテルの一つであるラウンジで働くバーテンーーまぁそれは全て、父親の策謀だ。


 というのも彼と出会ったのは、何もホテルで、というわけでは無くーーそもそもは親同士の取り決めた、政略 のようなもの。


 私の家庭は、中流階級なのだが、父と彼の父が親友だったため、このようなことに。