隣から規則正しい寝息が聞こえてきて、
優雅の腕から抜け出すと、部屋を出た。


喉が渇いて、食の間を目指す。

みんなで食事をしている憩の間(イコイノマ)にはまだ明かりがついていた。






竜(リュウ)さん(料理担当)の消し忘れかな…。



なんて思いながら憩の間に入った。


「葉月、眠れないのか?」

「雅人さん…」



今日は着物ではなくスーツ。
否、スーツと言うより喪服。


どこか遠くを見つめるように、お酒を煽っている雅人さん。
どこか悲しさを帯びている。

「普段から睡眠をあまりとらないので…」



「そうか…。」






私のほうを見ず、遠くを見つめて話すその後ろ姿は…どこか悲しげな雰囲気。




雅人さんはカラになったコップを見てため息を一つこぼす。そしてビール瓶に手を伸ばす。



私はそのビール瓶を持って、雅人さんにコップを渡してビールを注ぐ。

「…葉月、ありがとう」

切なげに笑うと、少しビールを口に含んでまた遠くを見る。





「ご一緒します」



断わりを入れられないうちに、自分のコップにビールを注いだ。


それを口に含んで、少し驚いたような表情で私を見る雅人さんに言った。










「何かあったんですか?」