次の日、やっと始末書と報告書を書き終えて、事務に提出した。



「お疲れ様でした、若。少しお休みになられた方がよろしいかと…夕方から宮日(ミヤビ)組と会食です」

「いや、いい。今日、皐月の妹が退院する」

「あぁ、そうなんですか。では車を手配します」



「あぁ」

俺はこめかみを押さえながら立ち上がった。

手配された車に乗って病院へ向かった。






『降りればいいの?どの辺にいる?』
「入口んとこ。黒い車停まってっから」
『うん。』

電話を切って目を瞑る。
やばい…寝そう。

「若…若。」




「…ぁ…あ…。」
もうほとんど眠っている俺に、助手席でため息をついて車から降りた圭斗。


しばらくして、外から声が聞こえた。




「皐月さんの妹様で?…そうですか。俺は若の…あぁ、失礼。堂島 優雅の側近の、新 圭斗と申します。若は中で寝ちゃってます。気にしないでくださいね」

起きとるわ。


圭斗がドアを開けた。
「あ、起きてますね」

圭斗は葉月にそう言って、半ば葉月を押し込むようにして車に乗せた。

「私…リムジンなんて初めて……」





中の豪華さに若干ひきつりながら俺の隣に寄ってきた葉月。



「今日このまま組行くの?」
「あぁ」


やったーっと嬉しそうに笑う葉月に、俺の中で何かに亀裂が入った。

「わっ」


葉月の驚いたような小さな悲鳴に、圭斗が驚いて振り返ったけど、慌てて前を向いた。

それは俺が葉月を押し倒してるから。