「…ゆ……が…っ」



息をするように小さく優雅の名前を呼んだ葉月ちゃん。
俺達は葉月ちゃんを見た。


虚ろな目のまま、まるで優雅を捜すかのように何度も何度も優雅の名前を呼ぶ。




この距離じゃあ、聞こえるはずがない。

なのに、優雅は手を止めていた。




「葉月…?」

優雅は悲痛に顔を歪ませながら葉月ちゃんの名前を呼ぶ。

葉月ちゃんも無意識で呼んでいるのか、何度も途切れ途切れに優雅の名前を呼ぶ。




優雅は葉月ちゃんを抱き上げた。
「葉月……」



優雅は葉月ちゃんの頬を割れ物に触れるかのように優しく触る。

今まで虚ろでどこを見ているか分からなかった葉月ちゃんの目は、しっかりと優雅を見ている。