「優雅!」


ぼーっとしていた俺は、お袋の声で肩を揺らした。


「しっかりしなさい」



組員たちはバタバタと走り回って対応する。

車を回したり、毛布を持ってきたり。


「うぅー…っ…く、」



目をギュッと瞑って痛がる葉月。

俺は、どうすれば…。


「ここ、さすってて」


お袋に言われて、腰のあたりを摩ってあげる。

「いっ…!、なんで…」


「葉月…」

「ちょっと…早くない…?」


今は楽なのか、呼吸を整えながら俺に言った。


「あぁ…。」


「大丈夫よ…初産だから、…こういう事もあるのよ」


お袋が車はまだか、と聞くと、柳田が走ってきて準備が出来たと言いに来た。


俺は葉月を抱え、お袋、親父と車に乗りこんだ。



そこでまた、陣痛が来たのか、叫ぶように声を上げた葉月。


「感覚が短いね…」


お袋が葉月の汗を拭く。


「柳田、どれくらいで着く?」

「5、6分でっ」




胸ポケットからスマホを取り出し、風翔さんに電話をかけた。


「今病院ですか?」

『なんだ、そうだけど…、葉月、どうかしたのか…!?』

声が聞こえたのか、向こうで声を荒らげる。

「陣痛がきたみたいで…、森谷(徳孝)さんに伝えてもらえますか…っ?」

『わ…分かった…っ』