私が皐月を奪ってしまったから。
私がみんなの仲を壊すようなことしたんだよね。

「葉月ちゃん」


薫の真っ直ぐな目が私を射ぬく。


なんだか見ていられなくて海に視線をやった。
ーグイッ




薫は私の頬を両手で包んで、自分の方に向かせた。













「皐月は皐月。葉月ちゃんは葉月ちゃんだ」





薫には私が考えていることが分かるんだね。

その言葉で私の目からは涙がこぼれた。





ごめんなさい…。
本当にごめんなさい…。

ーーー皐月を奪ってごめんなさい…。







「例え皐月が戻ってきたとしても、葉月ちゃんを手放すようなことはしない。少なくとも俺は…黒龍に葉月ちゃんの存在は大切だと思う。…『姫』って言うのはね…そのグループの弱みにもなれるし、強みにもなれるんだよ」





姫になった日に若葉から聞いた。
『敵族にとっては黒龍を潰すために使える駒になれる、それが弱み。
俺達黒龍にとっては守るために何があっても戦える、強くなれる原動力、それが強み。』






薫は私の頬から手を離した。







「俺はね……葉月ちゃんがどこかへ行ってしまいそうで怖いんだよ。新しい光を見つけたのに…君がいなくなってしまえば、また黒龍は闇に包まれる。…決して皐月の代わりなんかじゃないよ。俺はそう思ってる」





薫の言葉は皐月の身に起こった全てを知っている、その元凶の私には毒だった。












ーーーーーごめんなさい…。