兄貴は力なく頷いた。

お袋が兄貴を支えながら、通された仮眠室に入った。


「俺のせいなのに…俺のせいなのに、なんで…兄貴が…」


俺の息を吐いたような小さな声。
誰にも聞こえてないと思っていた。



「君は、柊雅君だね。…葉月を連れてきてくれてありがとう」



如月先生は優しく笑って、白衣を羽織って出ていった。





「悔しいな」
「怒鳴られるのは俺達もなんだけどな」
「葉月を守れなかった」
「黒姫…、そう決めた日に守るって決めたのに…」
「葉月を信じて待とう…」
「くそ…っ」





そう…俺は俺のやるべき事をやる。


「親父」

「ん?」



「女を5人ほど…敵にしたい。」







「お前の?それとも…堂島の?」




「堂島の」





迷いなく言った俺に、親父は満足げに頷いた。



「旭組もお手伝いさせてくださいね。俺も…国から追い出すくらいしてらやないと…気が済みません…」




そう言ったのは旭組次期組長の薫君。


いつも
もの優しげな薫君はおらず、低く冷たい声。



旭組は堂島よりも身分下の組。

だけど、てっぺんに興味がなく、目指さないだけで相当な力を持っている。



「「あの女どもの顔は忘れもしない。」」






「…許可しよう。だが、柊雅。お前はまず着替えてこい。血まみれだぞ」


葉月を抱き抱えた時、付いた葉月の血。

白いカッターシャツに大量についていた。