「普通…人は本能的に頭を守るもんだ。
あの階段の傾斜じゃ全身打撲か骨折程度で済む。
だが、葉月は咄嗟にお腹を庇ったんだろう…。
腕に打撲痕がいくつかあった。
…お腹だけなんだ…傷一つないのは」



如月先生の目からも涙が落ちる。


兄貴は顔を上げて、また泣いた。





「葉月には…いつ会えますか…?」



兄貴は顔を下げ、如月先生に言った。

「頭蓋骨をちゃんと嵌められるまで…ICUに入れる。
…葉月の脳への負担を避けるために隔離する。
…いつ急変してもおかしくない。
お腹の子も急変してもおかしくない。
そうなれば2人とも助からない。
だから…産婦人科、脳外科、心臓外科の医師たちがもう大丈夫と言えるまで……会えないだろう…」


「……そう、ですか…」

「ただ…状態を見て可能なら面会を許可できるかもしれない。…葉月を信じて待っていろ。絶対に死なせない」