入り口にいるわたしに近付こうとするわけでもなく、電気式のケトルをいじくる先生に仕方無く歩み寄る。
「これ」
「あぁ」
飾り気の無いカップの中をスプーンで回しながら、梶先生は空いた手でプリントの束を受け取った。
「じゃあ……失礼しますっ」
これ以上ここに居る理由も無く、わたしはこう言って一歩後退りしたとき、
「……似てきたな。母親に」
「……えっ?」
いつの間にかこちらに向き直った先生が、胸元まで伸びた毛先に触れた。
その瞬間、心臓が大きく脈打ち、見開いた瞳が梶先生の無感情な瞳と重なる。
「夕希(ゆうき)はここに居る」
梶先生の口から当然の様に零れだした母の名前。
さっき高鳴った心臓が、今度は変な鼓動を打ち始めた。
「雫希」
「っ!!」
「夕希が待ってる」
当たり前の様に母の名前を呼び、当たり前の様にわたしの名前を呼ぶ梶先生に頭が白く染まっていく。
先生に差し出されたメモには、幾度と無く目を逸らしてきた墓地の住所が書いてあった。
「これ」
「あぁ」
飾り気の無いカップの中をスプーンで回しながら、梶先生は空いた手でプリントの束を受け取った。
「じゃあ……失礼しますっ」
これ以上ここに居る理由も無く、わたしはこう言って一歩後退りしたとき、
「……似てきたな。母親に」
「……えっ?」
いつの間にかこちらに向き直った先生が、胸元まで伸びた毛先に触れた。
その瞬間、心臓が大きく脈打ち、見開いた瞳が梶先生の無感情な瞳と重なる。
「夕希(ゆうき)はここに居る」
梶先生の口から当然の様に零れだした母の名前。
さっき高鳴った心臓が、今度は変な鼓動を打ち始めた。
「雫希」
「っ!!」
「夕希が待ってる」
当たり前の様に母の名前を呼び、当たり前の様にわたしの名前を呼ぶ梶先生に頭が白く染まっていく。
先生に差し出されたメモには、幾度と無く目を逸らしてきた墓地の住所が書いてあった。

