「ちょっと、ハルどこに行くのよお!」
ずっとそう叫んでもハルは無視するばかりだし、周りの人もこんな赤メッシュのヤンキーが黒髪好青年に引っ張られる光景を見て、ナンパだの少女連れ去りなど思えない。
つまりもうハルに逆らえることはできない。
(あれ…この光景…前にもあったような…)
ー遡ること10年前ー
「咲、もう帰ろうよ?」
「いや!見つけるまで帰らない!」
ハルと遊んでいる時、ふとしたことでお気に入りの髪ゴムを無くしてしまい、ハルと一緒に探していた。
もう夕暮れ時だったけど、お気に入りの物だったから見つかるまで帰りたくなかった。
「咲…僕もう帰りたいよ…」
「帰りたければ帰って!!」
そんなわたしを見て、呆れるようにハルは背を向け去っていく。
帰ってと言ったが、だんだん小さくなっていくハルの背中が恋しくて、寂しくて、怖かった。
「い…行かないで!ハル!
うわあああああ!」
自分で帰れと言ったくせに、わたしは泣きじゃくった。
するとハルはくるんと振り返ってわたしの方へとスタスタ歩いてきた。

