「あれ…
何で立花さん…?」
昇降口に行くとすでに晴は掃除を始めていて
晴はわたしと目を合わせないよう下を向きながらそう言った。
「何か、梨子はデートがあるって」
晴はこくんと頷き掃除を続ける。
「……パン…………」
ん?
晴の暗い声は騒がしい昇降口でいっそう聞こえにくい。
「いつもパン、ロールパンとか白パンとか…
50円のもの頼んでますけど…」
ん?何が言いたいの?
怪訝な顔をしたせいか、晴はいっそう怖がって下を向く。
「……安くていいんですか?」
晴は顔を上げる。
化粧はしてないのにまつ毛も長くて目もくりっとしている、そして鼻筋も通っている。
いつも下を向いて分からなかったけど、晴は化粧をして髪を巻いて学校に来るわたしたちよりも断然に可愛かった。

