二学期の始まりに席替えをして私の席はいつも一番前の真ん中だった。

黒板がよく見える代わりに教師からもよく見える。

眠気にノートを取る手が止まっていることを教壇にいる先生は見逃さなかった。

「テストに出るからきちっとノートに取るように。」

私の隣でそう声を掛けると先生は教壇に戻り授業を進めた。

チャイムが鳴ると「須藤」と私の名を呼んだ。

「ノート集めて職員室まで持ってきてくれ。」

「解りました。」

全員のノートを持って職員室の先生の所に持っていくと先生は煙草を吸っている。

「体に悪いですよ。」

「解ってはいるんだけど中々止められなくて。」

先生の机を見ると星形の灰皿に吸い殻が山盛りになっている。

「星形の灰皿なんて可愛いですね。」

「・・・貰いものだよ。」

「そう言えば。」

先生は話を変えた。

「汐見から聞いた。
お前を部長に指名したって。」

「私なんかに務まるか解りませんが。」

「私なんかなんて言うな。」

「つい・・・なんていうか癖みたいなものなんです。」

私は笑顔を作った。

「今は笑わなくていい。」

どうして私の感情が伝わってしまうんだろう。

先生の言葉は決して多くない。

でもその一つ一つに優しさが包まれている。

「小林もいるし、俺も出来ることはサポートするから頑張れ。」

「・・・はい。」

職員室を出て私は図書館へ向かった。