「先生は・・・教師なんだから。
そんな事言っちゃダメです。」

自分の心を抑えるための言葉だった。

「そうだな。
・・・忘れてくれ。」

忘れられる訳ない。

先生の言葉は私にしっかりと刻まれてしまったから。

「私、家庭科部に戻ります。」

「解った。」

模擬店に戻ると先輩たちが片付けをしていた。

「汐見先輩。」

「ゆずちゃん。」

「片付け手伝います。」

「文化祭は楽しめた?」

「はい。」

文化祭終了の放送がかかる頃にはすべて片付け終わり家庭科室でティータイムになっていた。

「ただいま~。」

「おかえり。」

「紗智ちゃん、おかえりなさい。
文化祭は楽しめた?」

「とっても楽しかったっ!!」

「私たちも楽しかった。」

汐見先輩が他の先輩を見る。

先輩たちが頷く。

「それでね。
私たちは文化祭を以って引退する訳なんだけど・・・。
次の部長をゆずちゃんに、副部長を紗智ちゃんにお願いしたいと思うの。」

「汐見先輩?
紗智を部長にの間違いじゃないんですか。」

「間違いじゃなくて、ゆずちゃんに部長をお願いしたいの。」

汐見先輩は私を見つめてはっきりと言う。

「私は後から入ったし、不器用だしとても部長なんて。」

「紗智はいいと思う。」

「時々は私たちも遊びに来るし、解らない事はいつでも聞きに来てくれて構わないから。
紗智ちゃん、ゆずちゃんをサポートしてあげてね。」

「はあい。」

「それじゃ、文化祭終了のささやかなお祝いしましょ。」

先輩たちがカップ片手におしゃべりを始めても私は一人無言だった。

「ゆずちゃん、大丈夫だよ。」

紗智が私の不安を察知して声を掛けてきた。

「紗智がいるし・・・
それに伊藤だっているよ??」

伊藤。

紗智の口から出た先生の言葉に反応してしまう。

「ゆずちゃん、伊藤と何かあったでしょ。」

「べ、別に何も。」

「ゆずちゃんって嘘つけないよね。」

「話さないとくすぐっちゃうよ??」

紗智がくすぐり攻撃の準備をしたので私はその場から逃げ出した。