「文化祭、楽しいねっ。」

「うん。」

自分が積極的に参加するなんて高校に入学した頃は思ってもみなかった。

「そう言えばね。」

「文化祭でカップルって結構出来るんだって。
告白したり、されたりで一緒に文化祭回ったりするって。」

「・・・そうなんだ。」

「ゆずちゃんは羨ましくないの?」

「羨ましくないわけじゃないけど、もし好きな人と気持ちが通じたとしても一緒に文化祭回るとか無理だし。
それ以前にもう気持ち言わないって決めてるから。」

「どうして?」

「先生を困らせたくないから。
・・・卒業までは何も言わないでいようって思ってる。」

「・・・そっか。」

「紗智は明日、彼氏さん来てくれるんでしょ?」

「うんっ!!」

紗智の顔が一気にほころぶ。

明日は私にとっても大事な日。

お母さんに、今の自分を見てもらいたい。

家庭科部の模擬店に戻ると古賀君の姿が見えた。

「哲君。
来てくれたんだ~。」

「約束したからな。
何が入ってるんだ?」

「ええとねクッキーとマドレーヌと色々っ。」

「5つ貰えるか?」

「古賀君、食べれるの?」

「クラスのやつらに差し入れ。
甘いものは女子が喜ぶと思うし。」

「哲君のクラス、カフェだしわざわざ差し入れしなくてもいいのに。」

「いいんだ。」

紙袋に詰めて渡すと古賀君はそれじゃ、と言ってクラスに戻っていった。

昼からも午前中と同じペースで人が来てくれた。

「結構たくさんの人が来てくれたね~。」

「知り合いが多かったけれどなんとか材料分は売り切れるかな。」

汐見先輩が浴衣を解きながら言った。

「明日は一般日だから今日より忙しいかもしれないけど二人とも頑張ろうね。」

「はい。」

「はあい。」