帰宅して小さなメモとにらめっこしていた。

いきなり知らない番号から掛かってきたらびっくりするだろうし、そもそもどうやって話せばいいのか。

(とりあえず掛けてみよう)

「はい。」

「・・・須藤です。」

「柚依っ?!
どうして俺の携帯の番号・・・」

言いかけてすぐに紗智の事が解ったようだった。

「今日ね、紗智がバイト先に来たの。
それで、古賀君が心配してくれてるって携帯の番号渡してくれて。
・・・色々心配させちゃったけどもう大丈夫だから。』

「すごく心配したんだ。
お前のことだから無茶な事したんじゃないかって。」

「髪切っただけだよ。』」

「ごめん。」

「謝らないで。」

「私は良かったって思ってる。」

「柚依、変わったな。」

「伊藤先生にも同じ事言われた。」

「強くなった。」

「そうかな?」

「守ってやりたい、なんてもう言えないかもな。」

「古賀君。」

「嘘の恋人は終わったけど、これからも友達だから。」

「ありがとう。」

(電話を掛けて良かった)

電話を切った後、私は日課の勉強とマフラー編みにとりかかった。

マフラーは少しずつ長くなっている。

(出来上がったら自分で使おう)

編みものをしている時、思い浮かぶのは伊藤先生だった。

(諦めが悪いよね)

解っていても先生の笑顔が浮かんできて降り積もる想いが胸をしめつける。

このマフラーが編み上がったら、もう一つ作ってみよう。

渡せないけど、想いを込めて。