アイツに誰も傷つけさせない。

(怖いけど・・・、今まで助けてもらったんだから)

下校時間になって、私は十組へ足を運んだ。

「柚依?」

教室のドアを開けようとしたら、どこかから戻って来たらしい古賀君に呼び止められた。

「小西君に話があるの。」

「アイツは今教室にはいないけど・・・。
どうしたんだ。」

「話があるの。」

「柚依、俺に話せよ。」

「後で、家庭科棟の非常階段で待ってる。」

それだけ伝えると私は足早に家庭科棟に向かった。

(どうやって伝えよう)

言葉をまとめていると古賀君の姿が見えた。

「隣、いいか?」

「うん。」

「何があった?」

「・・・アイツにに別れろって言われたの。
私で遊ぶのに古賀君が一緒にいると出来ないから。
このままじゃ、アイツはまた古賀君を傷つける。
私はそんなの絶対嫌。
だから嘘の恋人、やめよう?」

「柚依。
俺は、傷ついたって構わない。」

「私が嫌なの。」

私はきっぱりと言った。

「今までありがとう。」

私は古賀君に頭を下げた。

「柚依っ!!」

私はアイツを探すためにその場を後にした。

校内を探し周ってもアイツの姿はない。

「勇気はもう帰ったよ。」

「水沢・・・さん。」

「ホントに別れるとか、しかも正直に話すとかアンタ馬鹿じゃない?」

「どうして知ってるの?」

「家庭科棟の非常階段は穴場だけどね、茶道部室にいたら声聞こえるし。」

「あなたは・・・何が目的なの?」

「私はあんたの存在が気に入らない。
勇気が昔からいちいち構うあんたがね。」

「昔から?」

「あんたは覚えてないみたいだけど、同じ中学だから。」

「好きでおもちゃにされてるわけじゃない。」

「だったらそう態度で示すんだね。
反抗的なおもちゃは勇気もいらないでしょ。』

そう言うと踵を返し、水沢あかりは行ってしまった。

(反抗する・・・)

今まで耐えていれば終わるから、抵抗することはしなかった。

(今なら、出来る)

大切な人たちを守るためなら抗ってやる。