最初で最後の恋だから。ーセンセイー

勉強会とは言え人の家にいるというのは不思議な気分だ。

ましてや男の子の自室にいるなんて。

「座ってて。」

古賀君はそう言って部屋から出て行ってしまった。

「紗智。」

「本当に良かったのかな・・・?」

「大丈夫だってば!!」

「だって古賀君、あんまり喋らないし。」

「それはね-、」

紗智の言葉を切るように誰かが入ってきた。

古賀君によく似た人だったからお兄さんだとすぐ分った。

「あ、聖。」

「初めまして?」

「紹介するね、哲君のお兄ちゃんの聖。」
私達よりいっこ上で成城高校の二年生なんだ。」

「成城高校ってあのうちの学校の隣にある進学校?」

「うん。
哲君も頭いいけど、聖も同じくらい賢いんだよ!!」

「紗智?」

「誉めてくれるのは嬉しいけどね、勉強しに来たんでしょ?」

「紗智は勉強もだけど聖に会いたかったんだもん。」

「毎日、逢ってるのに。」

紗智の話では夕食を一緒に食べているので毎日逢ってはいるがそれだけでは物足りない・・・ということらしい。

「違う学校なだけで淋しいのに。」

くりくりの目が潤んでいる。

「解った。
勉強教えてあげるから、おいで?」

「わあい!!」

「ゆずちゃん。」

紗智がそっと耳打ちする。

「哲君と二人っきりにしてあげるね。」

嬉しそうにお兄さんの手を握り締めて部屋を出て行く。

(紗智の狙いはコレだったのか・・・。)

一つ溜息をついた。

「幸せが逃げるぞ?」

「古賀君。」

溜息は幸せを逃がしてしまうとは言うけれど、この状況には少しの戸惑いが隠せない。

「飲み物持ってきたんだけど。
ミルクティーで良かった?」

「あ、うん。」

「紗智は?」

「お兄さんと勉強するって。」

「最初っからあいつ勉強する気なかったな。」

「・・・私もそう思う。
でも、紗智すごく嬉しそうだった。」

「あいつは聖が好きだから。
聖の傍にいるの見てると犬に見える。」

「犬?」

「ひっついて離れないんだ。」

「なんか想像つくね。
そういう女の子が男の人は好きなんだろうな。
素直で明るくて可愛くて。
正直、紗智が羨ましい。
私、可愛くなんてなれないから。」

「柚依。」

「そうやって自分を貶めるな。
・・・お前が自分を可愛くないって思ってても。
俺はもうお前を選んでる。
ずっと、昔から。」

「古賀君。」

「俺は気が長い方だからずっと待ってる。
お前が俺を選んでくれるまで。」

月は優しい光で向日葵を包んでくれる。

太陽の光は時に痛みを伴うけれど月の光は癒してくれる。

このまま、身を委ねてしまいたくなる。