最初で最後の恋だから。ーセンセイー

チャイムが鳴り、クラスメートも徐々に登校してきてクラスのあちこちから声がする。

入学式から一週間程なのに、もう幾つかのグループが出来ていてすごいなと感心してしまう。

当然のごとく私は独りだった。

独りでも平穏な生活が送れればそれで良かった。

授業が始まり、教科担当の伊藤先生がやってきた。

だが、小さな話し声はクラスのあちこちで止まらない。

私は最初こそ真剣にノートを取っていたが途中で窓の外に目をやった。

グラウンドにも植えられているサクラの花びらが風に舞っている。

(綺麗・・・)

一つのことに集中すると他の事が目に入らなくなるのは私の悪い癖。

「授業にもそれだけ集中して欲しいものだな。」

私のすぐ隣に立っていた伊藤先生の顔は怒っている様にも諦めの様にも見えた。

「須藤、昼休み職員室へ。」

短くそれだけ言うと教壇へ戻っていった。

授業が終わり伊藤先生が出て行くと数人の女子がバタバタと私の席にやってきた。

「いいな、須藤さん。」

「伊藤に呼ばれるなんて。」

「変わって欲しい~っ。」

「お近づきになれるチャンスだよねーっ。」

彼女達は口々に悔しそうに言葉を紡ぐ。

(伊藤先生ってモテるんだな)

私の反応が薄かったからか、彼女達はすぐに戻っていってしまった。

(何言われるか解らないし嬉しくもない。)

昼休みになるまで、無難に授業を受けながらも頭から伊藤先生の声が離れなかった。