最初で最後の恋だから。ーセンセイー

「紗智ちゃん。
悪いけどこれ、伊藤先生に届けてくれないかな。」

汐見先輩が作っていたフィナンシェ・ショコラだ。

「はあい。」

「ゆずちゃん、いこっ。」

「どうして私まで?」

「持って行くついでに進学合宿の話聞こうよ。」

「・・・。」

結局、私はまだ申し込みをしていなかった。

期限は近い。

私は紗智について歩き出した。

職員室に着くと伊藤先生は煙草を吸っていた。

「伊藤せんせ~。
お裾分け、持ってきた。」

「はいっ。」

紗智がラッピングされた袋を渡した。

「今日は、フィナンシェ・ショコラです。
汐見先輩が、作ったお菓子です。」

「今日は一緒じゃなかったのか?」

「ゆずちゃんと紗智はね、今マフラー編んでるんだよ。
せんせ、欲しい??」

「欲しいって言ったら彼氏に殴られるだろ。」

「あはは、そうだねっ。」

進学合宿の事は切り出せそうになかった。

二人の雑談が続いて行くのを止めようかと思い始めていたその時伊藤先生が私の名前を呼んだ。

「須藤。」

「あ、はい。」

「進学合宿の申込書。」

「さっき小林から聞いたんだけど違ったか?」

「違わないです。」

「お前は進学希望なのか?」

「まだ決めかねてます。」

「それなら行っておいた方がいい。」

「申込書は明日持ってきます。」

「ああ、待ってる。」

伊藤先生は普通に接してくれる。

いつか先生に恋した自分を懐かしく思う日が来るのかもしれない。